上甑島へ渡るのは2回目。それなのに、フェリーから島影が見えてくると、初めてのように胸が高まってきました。前回の旅が、ことのほか印象深かったからです。行き交う女性や子供たちの明るい笑顔と元気な挨拶、老人たちの自信を秘めた穏やかな表情、島人たちの折り筋がきっちりした物腰。
そのことを旅館「えびす屋」の主人・西薗修郎さんに話すと、こういう答えが返ってきました。「この島には昔から『モヤー』の精神が伝わっているんだよ。モヤー とは船と船を繋ぐもやいのことで、島では人間関係を大切にすることを意味するんだ」
そう教えられてから島を歩くと、連綿と受け継がれてきた文化と生活が、島のすみずみまで行き届いていることに気づきました。だから、ゆったりとした時間の流れのなかに落ち着いた秩序があり、気分をのびやかにしてくれるのです。それに加えて、突き抜けるような青空と360度ぐるりと見渡せる大海原。上甑島には島の魅力があふれていました。
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