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庵治の浜の蛸壷 |
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年の瀬の日暮れ時、庵治の浜で、底曳き(そこびき)船の帰りを待っている時、汚れた蛸壺(たこつぼ)を見つけた。様々な形と色、使われていない蛸壺には綱がかけられ、入り口を下に置かれている。岸壁のあちこちに小魚を裂いて干物を作っているおばさん達がいる。その一人に蛸壺のことを聞いてみた。「今はこれは錘に使っているのや。偶に町から買いに来る人があるよ。高い値で買っていくのや」と話してくれた。そこにも高さ20センチ余り、口周りの直径15センチ足らずの素焼きの蛸壺が転がっていた。時々、底曳き船が古い蛸壺を海底から引き上げてくることがあるという。古くは源平の決戦場でもあり、千年以上も昔から蛸壺やイイダコ壷が使われていたという土地柄である。
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珍しい太刀魚のみりん干し |
庵治は、四国の最北端、高松市から車で30分程の瀬戸内海に突き出た半島、小型底曳き船の浜である。5トン未満の底曳き船が107隻。ヒラメやタイ、エビ、ガザミ、タコ、メバルなど様々な魚種を獲っている。さらに、敷網(しきあみ)、さわら流し刺網、桝網(ますあみ)、延縄、たこ壷縄、潜水器とさまざまな業種の漁業があるが、このところ、ハマチ、カンパチ、トラフグ、ヒラメなどの魚類養殖が、漁船漁業の倍以上の売上がある。正組合員は224人、組合職員は32人。年間の生産額は32億2千万円である。「日本の漁業は瀬戸内海から変わる」と言われてきた。この浜の最近の動きからもそれがわかる気がする。それだけに養殖ハマチの安値は町の景気にも響いているようである。
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福谷 美穂子 |
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まもなく夫の船・貴栄丸が帰ってきます。私が嫁にきた頃は、この辺でカキが獲れたんですよ。魚も少なくなったね。船は機械化されて一人でも漁はできるが、朝の3時に出て、夕方帰るんですよ。日中は私一人です。「亭主元気でーーー」というでしょう。大漁をしてきた時はうれしいけど、元気で帰ってくるのが一番ですよ。
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