海の資源を生かすのは人
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紅乙女〜資源管理が作り上げたブランド |
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乙部船団船団長 阿部 一(乙部) |
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魚は、皆が勝手に獲っていたんでは、いずれ獲れなくなりますよ。このスケトウもそうでした。この前浜では、獲れなくなって、北の礼文島の周辺まで、家族で出稼ぎしていた時期があるんです。スケトウが戻ってきたのは25年ほど前のことです。そこで勝手に獲っていたのではまた獲れなくなるとみな必死に相談したのです。なかなか纏まりませんでした。漁船の大きさ、乗組員の数もまちまちですから、利害が対立するのです。しかし、この時苦労して申し合わせを作った事が、今の特産品を作り出す基になっているのです。最近の言葉で言うと正に「資源と漁場の自主的な管理」です。
第一に、漁場の使い方です。誰でも魚のいる所に縄を入れたいのは当然です。自由にしておくと激しい競争になり、争いの基になりますし、獲りすぎになります。そこで、漁場を3つのブロックに分けて、3つの船団が一日づつ輪番で使う事にしたのです。縄を打つ時間も午前6時からと決めました。
第二に、漁具の規模も決めています。乗組員ひとりに付き、はえ縄の数を25枚から30枚(一枚には100本の針がつきます)にしています。船の大きさもまちまちで5トン未満から19トン型までありますので、乗組員が多い大型船では、沢山のはえ縄が使えるようにしているのです。
第三に、漁期を自主的に決めています。11月から翌年の3月まで操業が出来ますが、1月末で、操業を辞めるのです。この頃からスケトウは産卵期に入るからです。肝心の卵がタラコの原料として向かなくなると言うこともありますが、翌年からの漁のために、沢山の稚魚を育てるねらいもあるのです。漁期中でも、産卵時期のスケトウを釣り上げたときには、その卵を絞ってそれに精子をかけ、孵化させた稚魚を放流しています。
第四に、近海の産卵場所は分かっていますから、その場所は禁漁区にして縄を入れないようにしています。スケトウは、オスの集団の中に雌が入っていって産卵をしますので、オスが沢山いるところが産卵場なのです。また、魚の生態を知るために、毎年2500尾程標識放流を続けています。津軽海峡を越えて、岩手県沖で獲れたり、日本海の武蔵堆で獲れたり大分遠くまで行くことも分かってきました。
最近、盛んに資源管理型漁業と言い出していますが、私達は20年も前から、こうして前浜の資源を大切に利用しているんです。 |
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