陽気と相談の天日干し

 ヒジキ刈りは刈ったあとがひと仕事です。酒井さんが刈ったあとから、息子さんがトラックで自宅の作業場へ。待っていた奥さんと娘さんが、大きな容器でヒジキを水洗いにかかりました。2回の水洗いは、塩分や汚れ、小石を取り除くためだそうです。

大釜で5 〜 6時間ゆでる

 次に、大きな釜に湧かした湯の中でゆでます。ヒジキは生のままでは硬くて食べられないし、あく抜きをするためでもあります。これが5 〜 6時間。水が少なくなると、水を継ぎ足します。これをさぼるとこげ ついてしまい、製品にならないそうです。ゆであがると、また真水で洗って塩分を取り除きます。

「ゆでてから真水で洗わないと、製品化したときに塩が浮き上がってきて、ヒジキが白くなってしまいます。品質には変わりないのですが、見た目が悪いですからね」 と釜の前の奥さん。

 翌朝、ゆでたヒジキを天日干しにします。砂浜にシートを敷き、なるべく薄くヒジキを広げます。ときおり、長い棒でヒジキをひっくり返し、乾燥を平均化します。天気がよければ2日間干すと、乾燥ヒジキができあがります。乾燥すると、生ヒジキの重さは7 〜 8パーセ ントに減少するそうです。

「刈り取った翌日から天候が崩れると、陽気と相談しながら干したり取り込んだり、これには苦労するなあ」と酒井さん。この日は青空が広がっていたのでひと安心でした。

なるべく薄くして干し
上げる
時々棒で動かして平均に干す 多田良西浜のヒジキ干し

 千葉県産のヒジキは、太くて長い「房総ヒジキ」が広く知られています。この太くて長いヒジキは、房総半島でも外房総で獲れるもの。南房総の富浦産ヒジキは、外房産にくらべるとやや細く、やわらかいのが特色です。ヒジキ好きには人気があり、わざわざ民宿「げんべい」に食べにきたり、買い求めにくる人がいるそうです。

 その晩、酒井さんの奥さんが作っ てくれた、刈りたて、干したてのヒジキの白和えは、磯の風味が心地よく、ほどよい歯ざわりでありました。

ビニール袋に入れて保存
する
富浦のヒジキはやわらかい 酒井さんちの乾燥ヒジキ

 


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