大房岬のヒジキ刈り
刈ったヒジキを腰のタモ網に入れる

 翌朝、大房岬の磯には富浦町の漁業権を持つ人が大勢集まっていました。酒井さんは胴長と呼ぶ胸まではいる長靴、ノコギリのような刃先の鎌、タモ網と準備万端整えて合図を待つばかり。

「ヒジキを刈るコツは、質の善し悪しをすばやく見分けることです。質のよいのは根本近くが海の中でこげ茶色に見えるのに対して、質が悪いのは色があせています。それで、質が良ければ、根本近くで切り取ります。質が悪ければ、根本からなるべく上のほうで切ります。質の悪いヒジキを根本まで切って製品にすると、白っぽく変色して見た目がよくないんですよ」

「今年のヒジキは成長がいいよ」と酒井さん 生のヒジキは濃い
グリーン色
ヒジキはホンダワラ科の海藻

 9時にスタート。まだ潮が引いていない浅瀬で、数十人が長靴を濡らして鎌を振り始めました。ヒジキを切ると腰に下げたタモ網に入れ、網がいっぱいになると浜へ運びます。やがて潮が引いてくると、岩場で刈って、刈ったヒジキをそばに置いておきます。ヒジキがまとまると、両腕に抱えて浜に用意した各自の場所へと運びます。

「私は毎年同じ磯で刈っています。祖母がやっていた場所なので勝手を知っているし、トラックに運ぶのも近いですからね」 と、ひと休みの酒井さん。

ヒジキは50センチから1メートルまで成長する ヒジキ刈りの必須道具、鎌とタモ網

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