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山本さん |
鴨川市漁協の水揚げ金額の約6割を占めているのが4カ統の巻網船団によるものだ。ちょうど事務所に現れた巻網漁船『浩昇丸(こうしょうまる)』の船主で組合の理事でもある山本清太郎さんにも話に加わってもらった。
それによると現在、1カ統はイワシを対象に、残り3カ統はイナダ・ブリ・ワラサやアジを漁獲しているが、「いつもなら9〜11月はアジ、あとの8〜9カ月ブリ類を巻くが、今年はアジがいなかった」。対象魚によって網の目合(めあい)や太さを変えるが今年はアジ用に変えることはなかったようだ。漁場は船で2〜3時間走った沖合の水深100mの場所だが、「この3日間は風が強いので休漁。網の修理をやっている」そうだ。1操業で1〜2回巻き、「1回に200〜300d揚がれば最高」と言う。
「昭和12年からの約10年間は手ぐり(魯で漕ぐ)の船で綿糸を使った巾着網、昭和25年から機械船で巻くようになった」。平成10年には息子の浩昇(ひろのぶ)さんが跡を継ぐことになったので船を造りかえ、現在の『浩昇丸』船団は14dの本船2隻、19dの運搬船3隻、19dの探索船1隻からなる。そこで、後継者問題について聞いてみると意外な答えが返ってきた。
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▼サーファーが漁師に
鴨川は“サーフィン”の全国大会が行われるなどサーファーの間で有名な場所でもある。「5年ほど前からサーフィンをやりにきた若者が漁船に乗るようになった。定置や巻網船には7〜8人は乗っている」と言う。海がシケる時は漁に出れず仕事は休みとなるが、サーファーにとってはシケる時こそ大波が期待できる。都合よく仕事を休める時にサーフィンができ、漁師は趣味と実益を兼ねた願ってもない仕事というわけだ。「人が人を呼び20代前半の若者が増えている。中には組合員になって家を建てた若者もいる」と言う。漁協事務所に隣接する2階建ての“漁民アパート”にはそんな若者たちが暮らしている。
▼養殖には不向き
山本さんにも昔の話が聞けた。「鴨川にイワシが上ってきて手で獲ったことがある。戦後は東京湾の奥までイワシがきた。マイワシは10〜20年の周期じゃないかと思うが、平成に入ってからは少なくなっている。昔は10円、20円だったイワシが今では200円にもなっている」「昭和35年まではカツオ一本釣りのエサ用にイワシを生簀に入れていたがやめた。ヒラメの養殖も5年やってみたが、この辺は地形が養殖地には向かない」と。鴨川、波太(なぶと)川の河口に近く、雨が降るとにごり水が海に流れ込むからだ。一方、資源の維持増大のために毎年続けているヒラメ・クロダイなどの放流効果は定置網に入る魚で実証されているようだ。
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