2002年3月
漁場の中に島がある!
長崎県五島漁業協同組合


新しい酒は、新しい皮袋に
組合長 山下 克己

 五島漁業協同組合は、沿岸の6つの組合が合併して出来た組合です。同じような規模の組合が、対等な立場で新しい組織を創ったのです。21世紀という新たな時代を生き抜くために新しい入れ物を作ったのです。やがては下五島の漁業者が一つのブランド作りをしていく時代が来ると思います。私たち生産者が、大同団結して力をつけた時に私たちの主張が世に認められることになるでしょう。
 例えば、私たちが売る魚の値段は、消費者のが皆さんが買う値段の三分の一です。他の業界ではこんなことはありません。150万円で売られている乗用車の出荷価格が50万円ということはないでしょう。もちろん、生き物と工業製品を一緒にはできませんが、生産者の手取りを少し増やし、消費者価格を少し減らすという目標を掲げることは間違いではないでしょう。
最高の漁場と謳われる五島の海
 このところ魚の小売の値段がほとんど変わらないのに、流通経費が上がっていますからそのしわ寄せは生産者である私たちのところに来るのです。生き物を扱うから経費がかかるのだという議論もあるでしょう。確かに、毎月決まった魚を決まった量だけ出荷することはできません。養殖を別として魚は獲れるときに獲るという原則は変えるわけにはいきません。海の中を回遊してくる魚は、いつもその場所にいる訳ではないからです。かといって、私たち生産者も手をこまねいていたのでは何も変わらないのです。取れた魚をそのまま出荷するのではなく、浜で一次加工してから出荷するという努力は必要です。私たちは、昔から専業の漁師として暮らしてきた訳ではありません。戦後もしばらくは、半農半漁の暮らしでした。
 周辺の海は今でも最高の漁場です。組合の水揚げ高のうち2割は他の地区の船の水揚げ実績である事からも明らかです。これからは、獲った魚をそのまま売るというよりは、価値を高めた商品として売っていく時代になっていくと思います。しかし、こうした私たちの努力が報われるためには、行政や他の業界への注文もあります。
浜辺ではアオサが
シーズンを迎える
 私たち沿岸の漁業者は、沖から岸に入ってくる魚を獲っているのです。地付きの魚といえども岸だけで育つ魚だけとは限りません。沖で育っている仔魚を沖で獲られてしまっては沿岸に寄ってくる魚がいなくなるのは当然です。私たちは、魚が沖で成長して大きくなって岸近くまで寄って来るのを待っているのです。これほど資源を大切にした利用の仕方はないでしょう。ですから資源管理は、沿岸から、1,500メートルではなく、1万メートルかそれ以上に広げて、海全体で資源管理を考えてもらいたいのです。
 率直に言いますが、大規模な網漁業は、産卵期の魚は獲らない、稚魚が育つ区域には網を入れないなどの厳しい規制が必要ではないですかね。消費者のみなさんに、美味しい地付きの魚を提供し続けるためにも、これからの新しい時代に、新しい海の秩序が必要だと思っています。



よみがえる沿岸漁業
参事 石山 藤太郎

 下五島の福江島には浦毎に漁協がありました。島の周りはどこもよい漁場で、島を囲むように沢山の定置網が張られていました。中には大手の水産会社が経営する定置もあり、戦後改革の中で漁業者がその権利をとり戻す争いが繰り広げられるなど、漁業で生きてきた島です。現在では、ほとんどの定置網が漁協の自営となり、漁業者は小型漁船と養殖業に携わっています。しかし、装備が近代化し、流通が広域化してくるとこれまでの小さな浦毎の小さな組織では対応できません。五島の魚の品質の良さではどこにも負けませんが、毎日水揚げされる魚を流通ルートに乗せて売っていくためには、五島一本のブランド作りが必要な時です。島で獲れた魚を島の中心の福江市に集め、まとめて出荷する体制が整ったこれからが私たちの正念場です。
五島ブランドのアオリイカ
「扇白水(あおりひめ)」
 現在、年間の水揚げ高は、37億円余ですが、その内の2割が県内の他の地域や他県の船が島近くで漁獲した物です。それだけ島の近くによい漁場が形成されているということです。確かに海の環境は変わりました。磯焼けが拡がり、漁業者は仔魚の姿が見えないといいます。漁協では、藻場作りや稚魚の放流にも力を入れています。魚の住みやすい環境を作ってやることが漁業を盛んにしていく源ですからね。
 組合合併のときに持ち込まれた諸問題を整理しながら、新体制を作り始めたところです。 各浜には、漁船漁業に、養殖に自信を持って取り組む青年たちがいます。担い手の高齢化は此処も同じですが、これらの若者達がこれからの沿岸漁業を甦らせてくれるものと期待しています。
五島漁協の特産品
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新しい酒は、新しい皮袋に
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