新鮮だからエラは取らずに料理

黒メバルの塩焼き。


船上で黒メバルを下おろし
する岡本さん。
 
   船を船だまりにつないだ岡本さんが、船上でさっそく黒メバルを下おろしです。二人が切り盛りする民宿「岡本屋」では、亭主が魚をおろして、妻が料理するのだそうです。亭主の手元を見ていると、ウロコとハラワタを取り除くだけで、エラはそのままです。ぼくが怪訝そうな表情を浮かべたのを見て、喜代美さんがこう説明してくれました。
「たたき網でとった魚は新鮮ですから、ハラワタは出してもエラは取りません。今晩はこれで煮魚を作ります。熱いうちは身がほろほろしておいしいですし、冷めると味がしみて、これもいい味ですよ」
 
 この日の岡本屋の夕食は、黒メバルの煮つけのほか、瀬戸内海の幸が膳いっぱいに並びました。グレ(メジナ)の姿造りとハリイカの刺身、マダコの刺身、モフグの南蛮漬け、タコの唐揚げ、コノシロのぬた、モズク酢、サザエの壺焼き、モフグの味噌汁。
 黒メバルの煮つけは、身がほろっとして、ほれぼれするほどの舌ざわりと味わいです。軽いけれど厚みがある。大仰ではなくひょうひょうとしている。そんなところに瀬戸内海の黒メバル煮つけの真骨頂があります。
 喜代美さんによりますと、黒メバルの煮つけは、水、醤油、酒、みりんの煮汁で煮たもので、「メバルからだしが出るので、ほかのだしは一切使っていません」。素材への絶対の自信がそう言わせるにちがいありません。
   

黒メバルのから揚げ

黒メバルの唐揚げ。下処理してから、塩とコショウで下味をつけて、
かたくり粉をまぶす。
からっと揚げるのが素材を生かす
コツ。
黒メバルの唐揚げ。腹骨はそのままで、二度揚げする。2〜3日酢に漬け込んでもおいいしい。

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伝統漁法のたたき網漁に同行
魚を音で驚かせて網にからめる
たたき網で漁獲した魚は元気!
新鮮だからエラは取らずに料理






やさしい富和さんと明かるい性格の喜代美さん。民宿「岡本屋」には魚好きが集まる。