天然の甘味がじわっ
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アオリイカの刺身。足がコリコリしてうまい。
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その遠嶋の夕食で、アオリイカの刺身を堪能しました。いかにも漁師流に厚めに切った刺身をほおばると、ねっとりと舌にまとわりついてきて、次に上品な甘味が口中全体にじわっと広がってきました。イカの女王の貫禄たっぷりのおいしさです。
「イカは横に切って刺身にすることが多いけど、今日は縦に切りました。こうすると一段と歯ごたえがあって、アオリイカ本来の味を楽しめる。ここの漁師は、みんなこうして切って食べてるよ」と網元は切り方までこだわるのです。
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目玉の上の肉のコリコリ感
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アオリイカは能登でクチイカと呼ばれる。
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アオリイカの足を使ったイシリの貝焼き。
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ぼくが刺身の一皿をぺろりとたいらげてしまうと、桜井さんが厨房からもう一皿を大事そうに持ってきました。
「これは私が食べるためにとっておいたんだけど、まずは試食してみてください。そうです、耳と足と目玉の上にある肉です。これは内緒だけど、アオリイカの胴の身はお客様に出して、見た目は悪いけれど、本当にうまい部分は私らが食べているんだね」と桜井さんはいたずらっ子のように首をすくめました。なるほど、足の歯ごたえと味覚は痛快でさえあります。目玉の上の肉のコリコリ感には、もう脱帽するしかありません。
能登名物のイシリの貝焼き(スルメイカの肝で作った魚醤「イシリ」でイカや小エビ、ナスなどの野菜類をホタテの殻で煮たもの。宇出津では「かやく」といいます)にも、アオリイカの足が使われていました。イシリとアオリイカとナスの相性が絶妙です。ぼくは酒を飲むのも忘れて、能登の味覚をハフハフいいながら夢中で味わっていました。
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