タイトル写真提供 : 斉藤 高根氏

ここのタコがおいしい理由

『志津川ダコ』の産地として
知られる寺浜
旗を立てたブイがタコ籠網の目印
 

タコは世界に200種以上、日本近海だけでも30種以上が生息しているとか。そのうち私たちになじみなのは、なんといってもマダコとミズダコでしょう。この2種類はよく似ているためか、単にタコと呼ばれて区別されないことがあります。しかし、分布も大きさも味も異なるのです。
  マダコは北海道以南に生息し、東北以南で多く水揚げされます。ミズダコは関東以北に生息し、北海道や東北の沖で多く獲れます。マダコが成長しても全長60センチ前後なのにくらべて、ミズダコは3メートル、体重20キロにも達します。


  肝心の味はどうでしょうか。マダコにくらべるとミズダコは水っぽく、味覚の点で劣るとよくいわれます。でも、ミズダコの胴(頭といわれる部分)のしなやかな歯ざわりと滋味はマダコにはないものです。
  宮城県志津川町にはミズダコとマダコの両方が水揚げされ、どちらも味のよいことで広く知られています。なかでも、志津川町の寺浜沖で漁獲される2種類のタコは、『志津川ダコ』のブランド名で呼ばれ、東京・築地市場でも高値で取引されていると聞きます。

ミズダコを漁獲 寺浜沖のミズダコは
岩礁に生息している


  そんなタコ産地の志津川町へ向かいました。


  タコ漁師である志津川町漁協組合員の阿部孝義さんは、あいさつもそこそこに『志津川ダコ』がおいしい理由をこう説明してくれました。
「タコというのは砂地や泥地にすんでいるものだが、ここではどういうわけかマダコもミズダコも、岩場や小石の海底にいるんだ。だから、タコの吸盤がほかのタコよりも汚れていない。その自然環境がひと味もふた味もうまいタコを育てるのではないかな」。


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取材:野村祐三