タイトル写真提供 : 斉藤 高根氏

あこがれの島へ

島と島をつなぐぐ里村のトンボロ(陸繋砂州)
長目の浜湖沼群の一つ、なまこ池
 

薩摩半島の西の沖に浮かぶ甑島列島。ぼくは以前からこの島々にあこがれていました。古くから追い込み漁が伝えられ、その規模の大きさはほかの追随をゆるさないと聞いていました。なんでも、100人前後の漁師がボンベを背負ってもぐり、イシダイやメジナ、ブダイなどの磯魚を網に追い込むとか。また、カメノテの味噌汁やウツボの味噌炊き、ハコフグの蒸し焼き、ウスバハゲやアオブダイの肝炒りなど、島ならではの魚料理も受け継がれているそうです。魚好きには見逃せない南の島々なのです。


  そんな甑島列島の一つ、上甑島へ。串木野港から高速船シーホークに乗ると、およそ50分で里港に到着。民宿に荷物を預け、さっそく島の探訪へ出かけました。武家屋敷跡の各宅地はざっと200坪ほどで、武家屋敷として小ぶりかもしれません。

江戸時代に郷士が住んでいた
武家屋敷跡
この大きな胸ビレで海面を飛ぶ

近代建築に建て替えられてもいますが、数百メートルにわたって積まれた石垣は規模も大きく、風情もあります。それにしても、こんな離島に多くの武家屋敷があったことが不思議です。


  里村の中心はトンボロと呼ばれる陸繋砂州の上にあります。海底の砂礫が海水によって運ばれ、波の作用で水面上に現れた砂州によって島と島が繋がれたそうです。海抜が平均2・3メートルの「里トンボロ」は、長さ南北1500メートル、最大幅1000メートル、最少幅250メートル。小高い場所から全景を眺めると、それはまるで鶴の首のように長く伸びていました。


  長目の浜展望台から、神秘の池として伝えられる長目の浜湖沼群の絶景を見下ろしました。並んでいる三つの池は、湖面の水位、塩分濃度、透明度、生息する生物までもが異なります。なまこ池ではナマコのほか海産の魚類が見られ、鰍崎池では大ウナギが出現し、貝池ではシジミが獲れるといいます。上甑島の小さな旅は、実に興味深いものでした。


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取材:野村祐三