荒波でもまれるから美味
渾身の力でホヤをはがす阿部さん
 市場に出回るホヤの多くは、南三陸の養殖ものです。旬は5月から9月。うだるような酷暑が続いた某日、ぼくはホヤの酢の物の涼しげな味を求めて、宮城県志津川町へ向かいました。訪ねたのは、志津川町漁協組合員の漁師で、民宿「松波荘」(рO226・46・9815)を営み、ホヤの養殖に取り組む阿部孝義さん。到着を告げると、あいさつもそこそこに「それではホヤを獲りに行こう」と腰を上げてくれました。
1個ずつ分けると見なれたホヤになる
海水で洗って獲り入れの終了

 漁船に乗り込んで10分ほど沖合へ走ると、そこがホヤの養殖場。浮き樽から海中へ伸びている養殖ロープをウインチで引き上げると、100を超えるであろうホヤが一塊になって、海面からヌーッと現れたのです。どんな地球の生き物にも似ていない、異様な姿にすっかり度肝を抜かれてしまいました。
 阿部さんが互いにしっかり抱き合っているホヤを一つずつはがしていくと、やっと見なれたホヤの形になりました。これを海水で洗えば、獲り入れ作業は終わりです。想像していたよりもずっと簡単。
「ここのホヤは太平洋の荒波をまともに受けて育つから、身が締まって、歯ごたえも味もいいよ。海がきれいだから、殻も身も大きくて、色が鮮やかなんだ」と阿部さんは鼻を高くするのでした。

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魚でもなく、貝でもない
荒波でもまれるから美味
生後4年目に漁獲
ホヤの汁が隠し味
ホヤ料理