ムラサキウニの大漁
「アブラメの瀬戸」で、いざ出漁
女たちが楽しそうに
ウニを獲っていた
大漁に顔もほころぶ坂本正さん
箱眼鏡でウニを探す

 かねてから懇意にしていただいている大久保照亨さん(勝本町漁協理事)を訪ねると、「ちょうどいいときに来ましたよ。今日は口開けの日なので、これからウニ漁を見学に行きましょう」。誘われるままに、小船に乗っておよそ 10 分。土地の人が「アブラメの瀬戸」と呼ぶ磯場が見えてきました。海底をのぞくと、ゆらゆらと揺れている海藻がはっきり見えるほどの透明度。いかにもウニがたくさん生息してそうです。

 ウェットスーツ姿の男女およそ 30 人が、ウニ漁の真っ最中。浅い場所では女たちは膝までを濡らし、深い場所では男たちが海に胸や腰まで浸かって箱眼鏡をのぞいていました。

「今日はよく獲れるとですよ」と気さくに声をかけてくれたのは、夫婦で来ているという坂本正さん。「浅い場所では、軍手をはめた左手で岩の下を探っていくとですよ。ウニをさわったら右手に持ったウンカギで掻き出して、左手で受け止めるとです」。

 ウンカギとはウニカギのことだ。木製の柄が付いたテンレス製のカギ。およそ 30 センチの長さがあります。

 男たちは柄が2メートル以上のウンカギを使っていました。大久保さんが手振りを交えて説明してくれました。「箱眼鏡で海底をのぞきこんで、岩から這い出してくるウニを見つけると、右手に持ったウンカギでウニを引っかけて、左手のタモで受け取るとですよ」。

 ウニ漁は、干潮時間帯の約2時間 30 分のあいだに行われますが、潮が満ち始める 30 分前後がもっともよく獲れるそうです。その 30 分が過ぎたらしく、坂本夫婦が漁を終えて船上へ上がりました。大きな籠の中には、たくさんのムラサキウニと少しのアカウニ、それに地元の人がガゼと呼ぶバフンウニが見えました。いかにも馬糞に似ているからバフンウニ。これが標準和名になっています。

「ここのウニのうまいわけがいろいろ言われるけど、私らは潮が速くて瀬波が高い海で育つからと思っているとですよ。ですが、私らは生でウニを食べんなあ。ウニ焼きで食べることが多いとですよ」

 と言う坂本さんのウニ焼き料理法は、ウニととき卵を混ぜ合わせて鍋で煮るもの。調味料はいっさい加えず、ウニをたくさん入れなければおいしくないとか。ウニ漁師でなければ、とても作れません。

「これはガゼ」と
見せてくれた
浅い場所では
女たちが活躍
漁を終えた
坂本さん夫婦と仲間



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