タイトル写真提供 : 斉藤 高根氏

怪魚だけど珍味なり

背の真っ黒いのが特色
腹側はまるで宇宙人だ
 

ぼくは漁師料理の取材で全国の浜を四六時中ほっつき歩いています。そんな旅で得た持論の一つが「見てくれの悪い魚ほど美味である」。アンコウしかり、オニオコゼやオニカサゴはもちろんです。エイもまた怪魚です。種類によって体型は少しずつ違けれど、著しく扁平で、大きな三角形の胸ビレを持ち、尾は細長く伸び、目が背側にある珍妙な姿はどれも同様です。腹側を見ると、口が真一文字に結ばれ、映画や漫画に出てくる宇宙人そっくり。こんな風体のエイが、第一級の珍味なのです。


  「エイを食べるの?」と驚く人がいるかもしれません。そんな人だって、酒の肴やビールのつまみとして、エイのヒレを楽しんだことがあるにちがいありません。そう、エイのヒレは文字どおり、魚のエイのヒレなんですよ。
  エイの種類は多く、

クロスカベ20尾の大漁

世界に350種、日本海域だけでも50種前後が見られるそう。
わが国で食用にされている種類としては、アカエイとガンギエイがよく知られる。北海道で「カスベ」と呼ばれ、よく食べられいるのがガンギエイ。なかでも、ガンギエイ科のメガネカスベが好まれています。そう、エイは北海道では、居酒屋でも、食堂でも、カスベの煮つけを見つけるのはそれほど難しいことではありません。


  北海道のあちこちで注文したカスベの味を思い出していたら、牡鹿半島の漁師で、表浜漁協組合員の遊佐照勝さんから「ここでナベユウと呼ばれるエイがたくさん獲れてるよ」と電話がはいりまし。どんな姿かとたずねると、背側が真っ黒で鍋に似ているからナベのエイで、それが転じてナベユウになったのだろうと教えられました。魚図鑑で調べると、ナベユウの正体は標準和名クロカスベとわかりました。エイ目ガンギエイ科ガンギエイ属。今までに味わったことがなく、いやがうえでもぼくの食指が動いたのです。


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取材:野村祐三