沖縄の那覇港から鹿児島行きのフェリーに乗って与論島へ向かいました。4時間ほどうとうとしていると、エメラルドグリーンの海に囲まれた、平らなベーゴマをひっくり返したような形の島 が近づいてきました。大きな期待とちょっとした不安が入り混じる、船旅のこの時間は悪くありません。与論港に到着して、待っていた送迎車で民宿「星砂荘」(рO997・97・3710)へ。
夕食で沖縄の人がスクガラスと呼ぶ小魚の酢漬けを楽しんでいると、主人の永井新孝さん(与論町漁協組合員)が、この魚の漁を説明してくれました。
「与論島ではスクガラスをユーガマと呼びます。島のユーガマ漁は旧暦の6月初めに行う年1、2回だけなんですよ。釣ったカツオの腹の中にユーガマがはいってると『そろそろ来るぞ』とカツオ漁師が教えてくれます。そうすると5人から 10 人のグループを編成して出漁します。みんなで泳いでユーガマの群れを見つけると、網で丸く囲って船に引き上げます。漁獲したユーガマは売るのではなく、全員で平均に分けるのが決まりです。うちでは薄塩にして冷凍しておき、これを食べるときに取り出して、酢漬けにしたり、唐揚げにするんですよ。もちろん、私も出漁します」
ユーガマ漁を1、2回にかぎるのは、生まれてエサを食べないうちの稚魚を獲るためなのだそうです。一度でもエサを食べると、腹に苦みが出ておいしくないという のですから贅沢この上ありません。そう言われると、目の前のユーガマの酢漬けは、沖縄産の塩辛よりもくせがなく、ずっと食べやすく感じました。なお、ユーガマとはアイゴの2センチ前後の稚魚のことです。
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