刺身はべっこう色

丸のまま煮た『波勝路』の丸煮
刺身。鮮度抜群のスルメイカは細作りがうまい

 子浦に水揚げされた『石廊崎沖のイカ』を食べるには、この小さな漁村にある何件かの民宿や旅館を利用するのが早道です。また、本物の沖干しを味わいたいなら、漁師兼業の宿をおすすめします。

 小久保さんは旅館『波勝路』を営み、妻の常子さんが作る料理に定評があります。この日の食膳には、沖干し、刺身、丸煮のスルメイカ料理のほか、ムロアジとメダイの刺身、サザエ壺焼き、イサキ塩焼き、小アジから揚げなどが食卓を飾り、これならどんな食いしん坊も大満足でしょう。

 沖干しは噂通りの美味でした。新鮮だからあぶる程度。潮の香りを鼻先で楽しみながら口に含むと、肉厚の身がやわらかく、それでいてしっかりした弾力性がありました。干物なのにはつらつとした生気があり、ほかの生干しとは一線を画するおいしさでした。

 刺身は細作り。これには小久保さんなりの理由があります。「テレビ番組を見ていると、まだ硬直もしてない獲ったばかりのイカで刺身を作っている。あれではゴリゴリボリボリと食感がよくない。旨味も少ない。生きのいいイカは、こうしてそうめんのように切ると甘味が出てきておいしくなるんだよね」。

刺身の作り方
@ 胴の裾を開き、足と内蔵を抜き取る

A袋を破らないように、そーっと肝を抜き取る

B胴にある軟骨を抜き取る

Cえんぺら(耳)を取り除く

D指でつまんで皮をむく

E包丁を入れて切り開く

   
F細く切り分ける    


細作りの刺身

『波勝路』の刺身は淡いべっこう色。冷凍ものの真っ白な刺身になれた客は、この色と甘味とおいしさに仰天するそうです。丸煮は小型のスルメイカを選び、文字通りの丸煮料理。肝がいい調味料となり、たちまち1杯が胃袋へ消えていきました。


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