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むつ湾のホタテは今が旬
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なんと言っても、ホタテの美味しい食べ方は,「さしみ」に限ります。私たちにとってホタテはいつも身近にあり,よく食べますが,生きている貝から取り出した貝柱や紐をそのまま食べるのが,一番美味しいのです。特に今頃のむつ湾のほたては、グリコーゲンをタップリ含んでおり絶品です。この良質のたんぱく質は,肌にもよく,健康食品そのものです。ホタテ貝は,周年出荷していますが、冬は冬なりに、夏は夏なりに、食べ方があり,それぞれに味わえますが,むつ湾のホタテ貝は,なんと言っても,梅雨時から初夏にかけて収穫した貝が,生産者である私たちからのお勧めです。
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夏泊半島・椿山
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私たちの住んでいる平内町東田沢は、夏泊半島の岬をまわった東側にあります。ホタテ養殖専業の漁村です。夏泊半島というのは,むつ湾の丁度真中につき出た半島で,ここには、椿山とよぶ椿の北限の群生地があります。日本カモシカが、車の前に飛び出してくることもある程素朴な自然が残されています。海の水もきれいで、岸辺からは,豊かな藻場も見て取れます。近くには、昔からの白鳥の渡来地・浅所海岸もあり、観光客も全国からやってきます。また、半島の突端にある大島の周辺は,よい釣り場で,週末は近県からの釣人で賑わいます。この豊かな自然だけしかなかった海が,ホタテ養殖の海に変わったのは,ホタテの栽培技術が確立された昭和40年代です。 | |||||||
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ホタテ養殖発祥の地
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椿山海岸に、ムツ湾を望むように,一枚の石碑が建っています。「ほたて養殖顕彰碑」です。これには、2人の名前が写
真付きで刻まれています。一人は, 山本護太郎先生,ホタテ養殖の研究に心血を注ぎ,養殖技術の開発に取り組まれた方です。一人は,豊島友太郎さん、ホタテ養殖の必要性を説き,自らも実践し、養殖の基礎を築いた方です。むつ湾には、古くからホタテ貝が生息していることは知られていました。しかし、自然の状態では,10年から20年に一度、貝が大量 発生して,それを収穫するというやり方を繰り返してきました。これでは、産業として成り立ちません。この変動をなくして,毎年安定した生産が出来ないものかというのが、むつ湾沿岸の漁業者の願いでした。 ホタテ貝は,春に産卵しますと,受精した卵から発生し,海中を漂った後,海藻などに付着して夏を迎えます。やがて、5ミリ程に成長したホタテの稚貝は、海底に落ちて生活を始めます。しかし、この稚貝が落ちた場所が水温やえさなどホタテの稚貝の棲息に適した条件に恵まれないと,殆どの貝が死滅してしまうのです。そこで、ある大きさの貝になるまでの過程に人間の手を加えて,生存に適した条件で育てるやり方を考案したのです。 |
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採苗器・中間育成
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受精卵から海中浮遊物となり,物に付着する習性を使って、人工的に付着させる仕掛け作りからはじまりました。現在は,化学繊維で出来た「たまねぎ袋」の中に,中古のサケマス流し網漁の魚網をいれ、この網に浮遊物を付着させます。海底に落ちる時期になりますと稚貝は海底ではなく「たまねぎ袋」の底に溜まりますので,それを集めて,パールネットと呼んでいる籠に移し替えることが出来るのです。この仕組みを作るだけでも様々な試行錯誤の連続でした。はじめは、海の中に網を建て,その網にわら網や杉の葉を絡ませたり、ロープに杉の葉を挿んでそれに浮遊物を付着させるなどの試みをしていますが、海底に落ちる時期の予測を間違いますと、折角付着した稚貝を失ってしまいます。たまねぎ袋を利用することで、海底に落とさないという難問は突破できたのです。 | |||||||
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養殖篭と耳釣り
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パールネットに移し変えた稚貝は、年を越しますと3センチほどに成長します。貝の成長にあわせて、養殖用の大きな篭に移し替えたり,一枚づつロープに吊るして(「耳吊り」)養殖がスタートできるようになったのです。養殖といっても,人間がえさを与える訳ではありません。海水中に含まれている植物性のプランクトンを栄養にして、貝は成長するのです。私たちは,ホタテ貝に成長に適した環境を提供してやるだけなのです。豊かな海が貝を育ててくれるのです。勿論その間,海中に吊るされた篭や貝には,海藻やフジツボなどが、付着しますので,潮通 しをよくする為に、これらの付着物を取り除いてやらなければなりません。収穫までに3年から4年かかることもあるのですから、この作業が私たち生産者にとっては大変な苦労です。 | |||||||
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海の力は何処から
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私たちのホタテの育て方は,正確には,養殖というよりは栽培です。海の環境が良くないとよい貝は育ちません。それだけに私たちは,海を大切にしています。海の中だけではなく,海辺や、海に注ぐ川を汚さないように気を配っています。海に植物プランクトンを運んでくれるのは、川です。その川に栄養分と一緒にきれいな水を供給してくれるのは、森です。川は,森と海を繋いでいるのです。ところが,最近私たちは,海から陸地を眺めると、異様な光景に出会います。夏泊半島は海岸線を除くと、鬱蒼たる森林に覆われています。ブナなどの広葉樹に覆われた深い森です。この森のあちこちが、赤茶けた山肌を覗かせているのです。伐採の跡です。この森林の伐採がすすむと,ホタテ養殖にも悪い影響を与えるのではないかと心配しています。そこで、若い漁業者たちが相談して,山に計画的に木を植えることにしました。今年も6月中旬に海岸に面 した山の斜面に木をうえました。800本のブナの木です。私たちは何時の日かこのブナの林がホタテの海を守ってくれることを期待しています。 | |||||||
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活貝の宅配
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私たちの漁協の組合員の数は1,043人。年間の販売額は約64億円ですが、この95パーセントはホタテ養殖です。ホタテ貝を何時の段階で販売するかは,養殖の仕方によって異なりますが,全体の1パーセントほどは、生きたまま宅配便として消費者に届けられます。この会員が全国で3,000人を数えます。漁協では,この人たちを対象に「ほたてのふるさと体験ツアー」を始めて3年になります。今年もこの中から抽選で首都圏の消費者45人を招待しました。(飛行機代、温泉宿泊費で2万円会費)漁船で海に出て,養殖作業を体験していただきましたが思いのほか喜んで戴きました。わたしたち生産者も力強い応援団が出来たと喜んでいます。そして何よりも,生のホタテ貝の美味しさを味わっていただけたことが何よりもうれしい事でした。 | |||||||
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